高知大スーパー公務員学科に思う 育成と専門性が生かせないキャリアの壁

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高知大スーパー公務員学科に思う 育成と専門性が生かせないキャリアの壁
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2026年4月8日、X(旧Twitter)のトレンドに「スーパー公務員」という言葉が上がっていました。

高知大学が、地域を引っ張る「スーパー公務員」を育てるための新しい学科を2027年に新設する、というニュースがきっかけのようです。

本記事では、高知大学のニュースをきっかけに、元公務員の視点から「スーパー公務員」という存在と「お役所仕事」の価値について、少し真面目にお話ししてみたいと思います。

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目次

「スーパー公務員」とは?

「スーパー公務員」とは、21世紀型の理想的な公務員像とされる存在の通称です。(参考:Wikipedia

噛み砕いていうと、お役所の既成概念を打ち破り、地域を劇的に変えてしまう職員たちの通称です。

「スーパー公務員」という言葉を世に知らしめた第一人者といえば、石川県羽咋市の高野誠鮮氏

2000年代、石川県羽咋市で「ローマ教皇にお米を食べさせる」「UFOで村おこしをする」といった型破りな手法で、消滅寸前の限界集落を救いました。

のちに、高野誠鮮氏のベストセラー「ローマ法王に米を食べさせた男」を原案に、2015年7月には唐沢寿明さん主演で「ナポレオンの村」というテレビドラマにもなりましたね。

高野氏以外にも、北海道民の私にとってなじみ深いのは、夕張市の今村直樹氏の事例です。

財政破綻という絶望的な状況下で、普通なら「予算がないから何もできない」と立ち止まるところを、逆境を逆手に取って「メロン熊」をプロデュースしたり、映画祭を盛り上げたりして、夕張の名前を再び世界に発信し続けた人物です。


他にも、高知県室戸市で廃校を「むろと廃校水族館」へと再生させた若松伸彦氏など、彼ら「スーパー公務員」は、まさに「地域を救うヒーロー」です。

前例がないなら自分で作り、予算がなければ稼ぐ仕組みを創り出す。

そのバイタリティは、本当に尊敬しかありません。

夕張の「メロン熊」は、可愛いとは言えないビジュアルで物議を醸したよね

凶暴な「ゆるくない」キャラとして意外に人気です

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「スーパー公務員」ではないけれど社会を支える仕事

2027年に高知大学に新設される「パブリックイノベーション学科(仮称)」では、自治体などで実習を重ね、教育や福祉、文化などの公共的な分野で新たな公益的価値を創出する「スーパー公務員」のような専門性の高い人材を育てようとしているそうです。

公共の課題に立ち向かう若者が増えるのは素晴らしいことですが、少し冷静に考えてしまう部分もあります。

なぜなら、公務員の仕事のほとんどは、そういった「派手な成果」が見える生産的なものではないからです。
むしろ、私たちの日常が「当たり前に続くこと」を守る、地道な仕事が大半です。

例えば、市役所の戸籍担当
一人ひとりの氏名や身分関係を、ミスなく正確に記録し続けること。
これが揺らいでしまったら、私たちはパスポートも作れず、社会的な証明すらできなくなります。

あるいは、税金や福祉の担当
膨大な書類を精査し、公平に徴収し、必要な人に支援を届けること。
「制度通りに運用できて当たり前」であり、窓口で感謝されることよりも、厳しい意見の方が多いかもしれません。

これらは、何かを生み出し、劇的にプラスにする華やかな仕事ではありません。
滞りなく事務が進み、「何もトラブルが起きないこと」が公務員として最大の成果です

派手な成功報酬があるわけでも、マスコミに称賛されるわけでもないけれど、この光の当たらない「守備の仕事」を実直にこなす職員たちがいるからこそ、私たちの社会の土台は維持されています。

筆者が働いていたのは「仕事がない=日本は平和」な役所だったよ!

あの役所が忙しいようだと日本の治安は終わりですね

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「スーパー公務員」の異動に関する心配

公務員には「異動」という仕組みがあります。

地方自治体では3年ごとに異動があるという情報を目にします。
私は元国家公務員でしたが、1年や2年で異動するのが当たり前。
3年同じ部署にいれば「長いね」と言われる世界でした。

この「異動」に関して、心配になってしまうことがあります。

心配① スーパー公務員を目指した学生の未来

ここで私が心配なのは、高知大学で「スーパー公務員」を目指して学んだ学生たちの未来です。

専門学科の卒業生だからといって、ずっと「地域創生」や「企画」の部署に居続けられるのでしょうか?

高知大学の卒業生のために特別な部署が用意されるとは思えません。

大学で一生懸命イノベーションを学び、「期待のスーパー公務員」として入庁しても、3年後には全く畑違いの戸籍担当になり、そのまた数年後には税金の徴収に奔走しているかもしれない。

それが公務員のリアルなキャリアです。

筆者はこのキャリアの断絶に嫌気がさして退職したよ!

そうなった時、高知大学の卒業生は「自分は大学で何を学んできたんだろう」と壁にぶつかってしまわないでしょうか。

あるいは、その専門性を生かせない環境に嫌気がさして、民間のコンサルタント会社などに引き抜かれてしまう未来さえ想像できてしまいます。

心配② 現職公務員との兼ね合い

また、既存の職員との兼ね合いも気になります。

「企画の部署に行きたい」とずっと希望してきたベテラン公務員を差し置いて、専門学科の卒業生だからという理由で特定の部署に配置されるようなことになれば、組織のバランスは崩れてしまいます。

異動の希望なんて、もとより叶わないんですけどね

採用庁への転勤の希望すら10年以上叶わねえのよ

特定の誰か、特定の学歴を持つ人だけが「生産的な仕事」を担うのではなく、どんな部署に配属されても、そこで淡々と日常を支える。

そんな公務員の構造と、大学が目指す「スーパー公務員」という理想の間には、まだまだ大きな溝があるように感じます。

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「お役所仕事」はかっこいい

特定の部署で一瞬だけ100点の成果を上げて社会を救うのもカッコイイし大事ですが、全ての部署で、誰が来ても安定した幸せを届け続けるのもカッコイイことです。

それこそが公務員の本来の役割である「日常を守る」ということです。

高知大学で学ぶ学生さんが、単なる「企画屋」に留まらず、地味な現場の重要性を理解した上で、既存のルールをアップデートできるプロになってくれることを願っています。

世の中を支えているのは、テレビには映らない、名前も出ない、でも毎日実直に窓口に立ち続ける「名もなき公務員」の皆さんです。

私は、そんな当たり前の「お役所仕事」を誇りに思える社会であってほしいと願っています。


なーんて、つらつらと書きましたが、私よりもずっと頭のいい人たちが一生懸命考えて高知大学に新設する学部なのですから、一介の元公務員の考えを述べるなんて野暮でしょうかね。

この人材育成が良い方向に向かうことを願っています!

▼すごく前に書いた記事なのでちょっと恥ずかしいですが、私が公務員を退職した理由はこちらです。

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